
朝、ポストを開けると優作宛の沢山のファンレターが届いていた。
もちろん新一宛のファンレターも沢山交じっている。
これはいつものことなので特に驚くことではなかった。
新一はそれを家の中から持ってきた空き箱に入れ家の中に運ぶ。
そして手紙を分け始める。
「えーと、工藤優作様、工藤優作様、工藤新一様、工藤優作様…」
30分かかりやっと分けるのを終える。
すると1枚のはがきが"ひらり"と落ちた。
どうやら見落としたらしい。
「ん?何だこれ?」
そこには、黒いペンで、工藤新一・志保様と書かれていた。
これはファンレターではないと確信した新一は文章を読み始める。
| 【工藤新一・志保様へ】 工藤新一・志保様お元気でしょうか? 今度、高校の同窓会を開くのでなるべくご参加下さい。 |
日時 5月4日
場所 帝丹高校
「同窓会のお知らせ…か…。何か面倒くさいな…」
「ねぇねぇお父さん、同窓会って昔のクラスの友達が集まって楽しむんでしょ。私も行
きたい!」
「行きたいってあのな…。それに行ってもおもしろくねーぞ。お前の知らない人ばかり
だし…」
「いいの。それでも行く!だってお父さんの昔のこといろいろ聞きたいもん」
「ハハハ…。志保はどうするんだ?」
「そうね。その日は特に用はないし、参加しようかしら…」
丁度、往復はがきだったので参加にマルをつける。
そして同窓会当日…
「…さん…うさん…起きて…、お父さんってば…」
自分の耳元で子供が呼ぶ声が聞こえる。
「んーだよ、今日は休みだろ。」
「今日は同窓会の日だよ。」
同窓会…、そういえば昨日はあの小説の発売日だったから5月3日。
と、いうことは今日は…
「今、何時?」
「えーと、8時35分…」
8時35分…、確か同窓会は10時…
んーだよ、まだ時間あるじゃねーか。
もう少し寝よう…。
再び新一は眠りにつく。
「あ、お父さん、寝ちゃ駄目、今日は同窓会の日だよ」
「あと、30分だけ…」
「今、TVで新しい推理小説の紹介してたよ」
え!まじ!
新一はベットから飛び起き、TVの前のソファーに座る。
そこには、自分の父である優作が書いた新しい小説の紹介をしていた。
『今回のテーマを…』
『そうですね…。太陽のようなお方とでも言っておきましょう…』
TVに出ている優作はマスコミ関係者に囲まれている。
だが、太陽のようなお方の意味がマスコミ関係の人達には全く意味がわからない。
『それはどんな方なのですか?』
『読んでからのお楽しみです。』
『TVに向かって一言お願いします。』
『このTVを観ているそこの青年には解けるはずだ』
おぃおぃ、それってもしかして俺のこと?
まてよ、太陽のようなお方ってどっかで…
あ!!まさか!!
新一は急いで阿笠博士の家に行く。
もちろん一保もついていく。
「新一、どうしたんじゃ?」
「どうしたんじゃねーよ。もしかしてあの小説って…」
「おぉ、この間、優作君がうちに来てのぉ、新一がお世話になってるお礼がしたいって
いうもんじゃから、わしを小説に出して欲しいって言ったら喜んで引き受けてくれたん
じゃ」
「普通、遠慮するだろ…」
「いやー、ついわしも嬉しくなってしまってのー。断らなかったんじゃ…。」
そして気付けば9時30分、そろそろ学校へ向かうことにした。
「でも帝丹高校なんて懐かしいよな。最後に行ったのいつだっけ?」
「9年前よ…」
帝丹高校前…
「懐かしいな…。ちっとも変わってねーぜ…」
そこへ何人かの人が新一に近付いてきた。
「よ!工藤、久しぶり!」
「あ、お前誰だっけ?」
「やだなー、もう忘れたのかよ、佐藤だよ…。顔全然変わったからわからないのもしょ
うがないけどよ…。に、してもお前全然変わってねーな」
「わりーかよ!!」
「新一…」
ふと声を掛けられる。
「蘭?お前蘭か?」
高校のときよりも凄く美人ですらっとしていた。
新一も見惚れる程だ。
「新一?やっぱり新一なのね。」
「でも、なんで蘭がいるんだ?たしか高校3のときクラス違っただろ?」
「やーね。聞いてないの?9年前の高3の全生徒の同窓会だって言ってたじゃない。」
あ、そういえばはがきにそんなこと書いてあったっけ。
「あ、志保ちゃんも久しぶり!」
「お久しぶりね。毛利さん…」
毛利さんとは灰原哀のときも高校の時もそうだけど現在もあまり喋ったことがない。
私って逃げてるのね…。
もう逃げる必要なんてないのに…
でも、でも…
「どうしたの?なんか元気ないよ…」
「あ、心配しないで…。大丈夫だから…」
「え?そ、そう。あ、もしかしてその子が一保ちゃん?」
「え、あ、あぁ。そうだけど…」
蘭達には子供が生まれたことは報せた。
もちろん写真ものせて。
だが、もう7年も前のことだ。
小学生の一保をみるのは初めてである。
「お父さん、この人とどういう関係なの?」
先程から、蘭や新一とお互い呼び捨てで呼んでいたので気になった一保は質問する。
「ぷっ!(くすっ)」
蘭、新一は吹き出しそうな笑いを堪える。
「俺とこいつはただの幼馴染み…。何も関係なんてねーよ。」
「そうよ。私と新一はただの幼馴染み。で、私の初恋の人ってところかな。」
そう。
毛利さんの初恋の相手は新一君。
新一君の初恋の相手は毛利さん。
だから、私は貴方の初恋の相手ではないのね…。
「初恋の人…だったの?」
「うん。でも結局実らなかったけどね…」
「お父さんの初恋の人はお母さんだったの?」
「…だよ…」
「え?」
新一は小さな声で言ったのでだれも聞こえなかった。
「…蘭だよ…。でも、途中で志保を好きになってたけどな…。」
「あら、途中で悪かったわね。私の初恋は江戸川君…だったわ…」
「何でここでコナンのことがでてくるんだよ!!」
江戸川君って誰?
お母さんの初恋の人っていってたけど…。
ここに来てる人の中にいるのかな?
「いいじゃない。私は江戸川君だったときから好きだったんだから…」
「あのなー。」
しばらく経つとマイク音が聞こえ始めた。
「あーあー。只今マイクのテスト中。皆さん聞こえますか?本日はお忙しい中お集まり
頂き誠にありがとうございます。9年ぶりの再開を祝って乾杯をいたします。皆さん紙
コップをお持ちください。」
丁度人数分の紙コップが自分の目の前に置かれている。
それに飲み物をつぎ手に取る。
「では、9年ぶりの再開を祝ってかんぱーい」
司会者の言葉の後に全員が続いて「かんぱい」を言う。
「ねぇねぇ、蘭お姉さん。」
突然蘭が一保に呼ばれる。
もう、お姉さんと言うよりおばさんと言われてもおかしくない年齢。
なのに、突然小学1年生の子供に「蘭お姉さん」と呼ばれて少し驚く。
「え?私?お姉さんなんて…。もうおばさんよ…」
「何言ってんのよ。どっからどう見ても若いお姉さんって感じじゃない。それにくらべ
て私なんかどこ言ってもおばさん呼ばわりされるのよ…。」
突然、聞き覚えのある口調と声で割り込んできた女性。
「そ、園子!園子も来てたんだ。」
「あったりまえよ。あ、もしかしてこの子が新一君の子供?可愛いじゃない。名前なん
て言うんだっけ?」
「一保。小学1年だよ…。あ、一保、こいつは鈴木園子。」
「あ、そういえばさっき私に用があったんでしょ。」
「う、うん。お父さんってどんな人…だったのかな…なんて…。」
新一の顔を目でちらちらと見ながら皆に聞く。
「新一のこと?うーん、大バカ推理之助で好奇心旺盛でサッカーが得意だったかな。で
も、新一ったら上手くすれば国立に行けたのに「サッカーは探偵のためだ」とか何とか
言っちゃって…」
「そうそう。新一君、音楽以外は全部できて学年トップの成績だったもんね。よくもま
ぁ、あんなに欠席して留学になんなかったことが驚きだわ…」
留学?
そんなに欠席してたのかな?
それに音楽苦手なんて初めて聞いた。
「そうね。好奇心旺盛で無邪気で子供っぽくて何でも事件に首突っ込んで…、そんな感
じだったわ…」
するとマイク音が聞こえてきた。
『えー、これより予定を変更してカラオケ大会を行いたいとおもいます。順番はクジで
決めるので呼ばれた方はこの朝礼台の上で歌って下さい』
げー。まじかよ…。
予定なんか変えるなよな…。
しかも、よりによってカラオケかよ…。
そして1番手の名前が呼ばれる。
『1番手は…、えー、毛利蘭さんです。』
自分の名前が言われず、一安心する。
「蘭、思いっきり歌っちゃいなよ」
朝礼台に上りマイクを手に持つ。
そして曲が流れ始めた。
「♪どんなー言葉に変えて 君にー伝えられるだろう あれからーいくつものー季節ーが
…」
次の番の人のクジが引かれ名前を呼ばれる。
『えー、工藤志保さん、お願いします。』
志保は台に上りマイクを持つと曲が流れ始めた。
「♪願いごーとひーとつだけ 叶えーてくれるなーら 傷つけあーた愛が始まらないよう
に…」
そう。
私はこの歌と同じ。
願い事一つだけ叶えてくれるなら…。
私は貴方と結婚して子供と幸せな家庭を築く。
これはもう叶った。
だけどもう1つ…もう1つ…
気付けば歌の順番は最後の人物のみとなった。
最後は一体誰の歌う歌で終わるのだろう。
そして司会者が名前を呼ぶ。
『最後に歌ってもらうのは…工藤新一君です。』
げーー!
嘘だろ。
何で最後が俺何だよ…。
嫌々と台に上がりマイクを持つ。
そして曲が流れ始める。
タイトルは「胸がドキドキ」だ。
「♪…ぶりの…つ…れて…僕は…た…」
小声で新一以外の人物は何も聞こえない。
『工藤君、大きい声で歌って…。聞こえないよ…』
当たり前だろ。
俺は聞かれたくないから小声で歌ったんだよ。
はぁ。
だから音楽は大嫌いだ。
再びメロディが流れ歌う。
「♪百年ぶりーのー世ー紀まつー泣けと言われーて僕ーは笑ったーー…」
新一の歌で全員が耳を塞ぐ。
「お、お父さんってこ、こんなに音痴だったの…?!」
「音痴で悪かったな。」
同窓会は無事に終了し元クラスメイト達は次々と家に帰っていく。
そして突然蘭が言った。
「そういえば、コナン君どうしてるかな?もう10年も会ってないんだよね…」
「げ、元気だぜ。俺の母さんがそう言ってたから…。」
「あ、そういえばコナン君と新一って親戚同士なんだっけ。よかった、元気にやってる
んだ。」
「そ、そうそう…」
コナン君?
お父さんの親戚にそんな人いたっけ?
遠い親戚なのかな。
あらあら。
ずいぶんと嘘が上手いわね。
それにもう組織は10年も前に潰れたのよ。
なぜ、まだ隠し続けるの?
毛利さんに本当のことを言って泣かせたくないから?
でも、このまま言わない方がいいのかもね。
誰にも…、ずっと…
つづく
■あとがき■
かなり長くなりましたがなんか志保の登場数が少ないような…。
あ、でも次はいっぱい登場させます。
優作が言った「太陽のようなお方」は「月と太陽と…」ので出てきた言葉です。
管理者
幸せなホットココアも8作目。
是非ともミルさんに感想を送ってあげてください。掲示板でもいいですので・・・。
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