Target は R.A.N

二,麗しき名探偵

「――奴らの足取りが掴めました」
毛利蘭誘拐事件発生から、3時間が経過していた。千葉刑事がこう言って部屋に入って来たのは、丁度その時だった。
「奴らは、明日の昼間に行われる、雪原コンツェルンのホームパーティで何かをする模様です」
雪原コンツェルン。電機メーカーONYなんかの輸出入に使われている輸送船や、東都環状線とか新幹線の製作にも関わっている、重工業の大手企業だ。
確か、園子の実家である鈴木財閥も、其処と仕事をしているのでは。
「ホームパーティ…かね?」
目暮警部が尋ねる。千葉刑事は頷いて、
「年に1回、親しい人間や取引相手を招くようです」
大きいパーティだから、紛れ込んでしまえば、バレないかも知れない。
「潜入捜査ですか」
佐藤刑事が言う。新一達も、それに続いて
「誰が行くんですか?」
「うむ…」
考える。警部が考える。――明日なのだ、あまり時間がない。
「俺にやらせてください」
「俺も」
「アタシも」
立候補したのが、高校生3人。
危険だと説得するも、通用するはずなく…、苦肉の策。
「高木君、君も行ってくれたまえ」
やや保護者的な役割で高木刑事、指名されてしまった。4人で行動と決定だ。
「――よし、今から作戦を言うぞ! 工藤君、覚悟してくれよ!」
「はい!」
そうだ。と、新一は考えた。
俺がついていながら、蘭をまんまと連れて行かれたんだ。俺がやらなきゃ。
俺が、蘭を助けなきゃ。その為なら、何だってやってやる。
――そう、何だって。
何だって…やってやるさ…。

――…!?

円陣を組んで、明日の作戦を告げられて
「ええーっ!? 俺がそんな事するんですかぁー!?」
新一の、悲鳴に近い絶叫が聞こえたのは、説明を受けた1分後だった。


「警部も変な事言うんだなぁ。工藤君、平気かい?」
「――お陰でこっちはオモロイけど」
「うるせぇ!」
パーティへの進入捜査。当然、着飾って行く事になったのだが…。
「…何で俺がっ」
新一の顔は真っ赤である。皆が似合わない格好をしているから――ではない。
それは自分だと言いたかった。しかも顔だけでなく、ある意味全身赤い。
「まあ、良かったな。これだけべっぴんなんやから」
「ホンマ、妬けるわぁ」
勘のいい読者は、もうお気付きだろうか?
――そう、新一は麗しくも、深紅のパーティドレス姿なのである。化粧までして。
この役、佐藤刑事に任せても良かったのだが、武芸の達者な佐藤刑事は、あとから何かあった時に飛び込んで来る役だ、と警部が判断したのだ。
じゃあそれなら、と、ペア決めとなって、当然の様に平次と和葉がまず決まり、高木刑事と新一の内、どっちが『女装』してパートナーとなるかで、満場一致で新一となったのだった。
実はもうひとつ理由があって、新一は顔を知られている恐れがあったのだ。それで、やや無理矢理に着せ替えてしまったという訳で。
「言っとくけどなー、俺には女装癖なんかねーからな!」
「解かってるって」
ちなみに、174cmの身長がある上、ハイヒールまで履いてしまったのであった。
こんなに背の高い淑女がいるかと言われると…ちょっと困るが、スタイルと持ち前の美貌でカバーしているので、まあ大丈夫だろう。
髪型は…? ハイ、きちんとウィッグをつけて、誤魔化しております。
イラスト(ドレス新一)
「はぁ…」
傍目から見たらモデルである。下手な淑女より美人なのが、本人は悲しかった。
(こんな時だけ、自分のルックスが呪わしい…)
バレる心配が少ないのが、少しありがたかったが。

会場に紛れてしまえば、それでも違和感がなくなる。その美貌に人目が集中するのが、少々やりにくいが。
――奴らは何処だろう。
(一体何が目的なんだ?)
こんな豪華なパーティ会場なんて。目立つような気もするが。
じゃあ、何故?
(何を考えているんだ?)
とにかく、正体がバレないように。あくまでも、奴らの動きを探るのが、目的だ。
割とバラバラで行動する。勿論、4人とも通信機はつけているが。
「お嬢さん、ミモザはいかが? 私がオゴりますよ」
カクテルグラスを手にした何処かの紳士が、新一に声をかけてきた。
ちなみにミモザとは、ジンとオレンジジュースのカクテルである。手にするグラスに、オレンジ色の液体が入っている。
「結構です」
新一は身も蓋もなく答えて、逃げ出した。――くそぉ、邪魔するな!

「…目ェ引くよなぁ」
離れた所にいた平次は、傍の和葉にそう言った。
「工藤君が? 下手な女優よりべっぴんなんちゃう」
流石は元女優の息子。父親である小説家の工藤優作も、結構な美形だし。その息子が二枚目になるのも、当然か。
(持って生まれた才能…?)
自分だって結構ルックスが綺麗なのに、何故か虚しくなってしまった平次は、傍のコーラのグラスに手を伸ばした。
――いや、コーラのつもりで口を付けたのだ。
和葉は気付いた。ここはアルコールを置いているテーブルだと。少しヤケになっていた平次は、一瞬気付かなかったらしいが。
「平次。それ、黒ビールなんちゃう」
「ぶっ…!」
吹き出している。飲んでしまったらしい。――遅かったようだ。

高木刑事は周囲に眼を光らせながら、カナッペを口にしていた。
怪しい人物。怪しい人物。
(って言っても…)
皆、大手企業や財閥の人間だ。手荒な真似は出来ない。
――そういや、その『ダーク・ゴッド』とか言う奴らは、どうやってこんな所に潜り込んだんだろう?
自分達と同じようにして潜り込んだんだろうか。
(あれ、工藤君は…?)
見失った…かもしれない。

新一は、眼を光らせながら会場を廻っていた。
「奴らは、奴らは本当にいるのか…?」
ドン、と誰かにぶち当たった。その拍子に、胸に留めていたコサージュが落ちてしまった。
向こうも、ぶつかった拍子に被害をこうむったようだ。グラスのウイスキーが背広にかかっている。
「あ、ごめんなさい。私よそ見していて…!」
咄嗟に女言葉が出るのは、受け継いだ女優の才能か。それとも昔とった杵柄、コナンの時に身に付けた技術か。
「いいえ…。――あ」
コサージュを拾おうと、お互いにかがんだ時に眼が合った。コサージュは新一が拾ったが、男が声をあげる。
「…? ――あ!」
この男! 蘭に声をかけてきた人物! 本当にいるなんて…!
「お前、工藤――」
男が言い終わる前に、何処からかヒュッと音がして、男の頭にサンドイッチが幾つかヒットした。
「何ボサッとしてんねん! 逃げるぞ!」
新一をそれとなく見ていた平次が異変に気付いて、そして咄嗟にサンドイッチを引っ掴み、投げたのだった。ベーグルパンの大きいサンドイッチなので、一瞬目くらましにはなっただろうか。
「工藤君!」
高木刑事が呼んでいる。もう、3人とも出口に向かっているではないか。
自分も逃げねば。新一は踵を返して走り出した。10メートル程走るが、
「あ!」
途端に体勢を崩して、バタッと床に転んでしまった。
「っつ…」
髪も乱れ、肩と顔を床に打ちつけてしまった。アザになるかも知れない。何で急に…。
――見ると、ヒールの踵が折れている。
「早くしてー!」
進行方向から和葉が呼んでいる。新一は紅いヒールを脱ぎ捨てて、そのまま駆け出した。
深紅のドレスの美女が靴も履かずに走る、というワケの解からない構図である。
(くっそー!)
もはや見栄えを気にする余裕など、あったもんじゃない。
猛然とロビーを突っ走って、外に待機させていた車の後部座席に、4人で飛び込んだのである。運転席の千葉刑事と助手席の佐藤刑事が目を丸くする。
「早く出して!」
さっきの男と、もう2人、入り口まで来たがもう遅い。
千葉刑事の運転する車で、サッサと退散してしまったのだから。


「――ん? 何だコレ?」
新一は、自分の着ているドレスに何か引っ掛かっているのを見付けた。
「何や、メモ用紙か?」
あの男とぶつかった拍子に引っ掛けて来たのか。新一は広げて、中を見た。

<orchid 明日10:00 千葉県 ○○海岸沿い 桜貝線、 本部へ>

「何かの打ち合わせ?」
和葉が覗き込んで来る。桜貝線といえば、つい最近廃線になったローカル鉄道ではないか。
「orchid? 待てよ…」
英語だ。『orchid』は、英語で、花の『蘭』。
「蘭が、ここに…?」
この電車を使って、蘭を何処かに連れて行くのだろうか。

「明日…か…」





◆作者より◆
このパーティネタ、というのは前からやってやろうと思っていたものです。
で――こんな話になりました。やりたい放題書ける(笑)。
話は違うのですが、段々と新一君の口調が乱暴になってきたのは…、ですね。
私、キャラクターの声をイメージして、それで台詞を考えて書くんですよ。
頭の中でイメージが、その時にアニメの声優さんの声で、出来るんですね。
口調の変化は…「犬夜叉」の影響か…? どっちも山口勝平さんの声だからか…?

――なら、平次は段々と、ベジータになるのか!?
(今、私の住んでいる地域では「DRAGON BALL Z」の再放送をしてるんです)

<挿絵について>
――は、私はCGで絵が描けないので、紙とペンというアナログなやり方です。
しかもクーピーペンシルという、原始的な道具で彩色しています。
あまり美人にならなかったのが悲しいです…。ゴメンよ、新一君。
私の描く人物は、割と皆、なで肩なので、女の子みたいになってしまいますね。
しかも身体が上手く描けないので、適当な絵を見て写し描きしているのです(爆)。
ホンット画力ないなー…、自分。
絵を描くのが好きな方、私に挿絵を恵んでくださ〜い!(Help me…)

何か凄く長くなっちゃった。すいませんです。
(アニメの実名バリバリ出しちゃって、良いのかな…?)


ジェーンさんのメールアドレスはjen.snow@mbi.nifty.comです。
感想は新たなる作品となります。是非、送ってあげてください。

▼管理者より▼
平次「・・・・・・・く、工藤!?頭おかしくなったんとちゃうか?」

ドゴバキボコ(平次を殴る音)

ザッバーン(平次、池に落ちる音)

新一「全く、失礼な奴だ!
    えっ、今日はこれでコメント終わりって?
    平次君が池に落ちて流されたから続きは今度?なんだよそれ・・・・」

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